英語学習のヒント

カンマで区切られた英文の読み方

2014年1月11日

今、私が読んでいる美術史の専門書の中に文法が苦手な人がいかにも苦労しそうな文章がでていたので取り上げてみます。非常に挿入の多い文章なのですが、この文章の主節の構造(主語―動詞―目的語など)が分かるでしょうか。正解は下方に記します。

 

The said Michelangelo, being an old man, and desiring to serve His Holiness with all his powers; being also constrained and compelled by him in the matter, and being unable to do so, unless he is first released entirely in this work of Pope Julius, which keeps him in a state of physical and mental suspense, petitions His Holiness, since he is resolved that he should work for him, to negotiate with the Illustrious Lord Duke of Urbino for his complete release from the said Tomb, and cancelling and annulling every obligation between them.

 

背景知識としては、これはイタリア・ルネサンスの彫刻家ミケランジェロが1542年に時の教皇であるパウルス三世に当てた手紙の英訳です(原文はイタリア語)。ミケランジェロはパウルス三世からパオリーナ礼拝堂のフレスコ画制作の依頼を受けていたのですが、それ以前にユリウス二世(パウルス三世以前の教皇)から受託した墓廟の仕事があるためにパオリーナ礼拝堂の仕事に取り掛かれません。文中にあるHis Holiness はローマ教皇に対する尊称なのでここでは受取人のパウルス三世をさしています。また書き手であるミケランジェロは自分を指すのに一人称を使わず三人称を使っています。

 

以下、解説です。

 

文の主要な構成要素だけを赤字にすると以下のようになります。

 

The said Michelangelo, being an old man, and desiring to serve His Holiness with all his powers; being also constrained and compelled by him in the matter, and being unable to do so, unless he is first released entirely in this work of Pope Julius, which keeps him in a state of physical and mental suspense, petitions His Holiness, since he is resolved that he should work for him, to negotiate with the Illustrious Lord Duke of Urbino for his complete release from the said Tomb, and cancelling and annulling every obligation between them.

 

この文章は挿入が全部で8つもある、一見すると、とても複雑な文章です。教皇に当てた手紙の英訳なので格調高い文章を意識した結果だと思います。これだけ長く複雑な文ですが、大文字で始まりピリオドで終わるひとつの文で構成されています。

読むポイントとしては、英語というのは主語の後には動詞がくるという基本に戻ることです。その二つを特定していくことで文章全体の構造が見えるのです。冒頭にきているThe said Michelangelo が主語で、その後に6つの挿入句(節)を経てようなく動詞の petitionsが来るのです。ここでの注意点は、petition はこのままの形で名詞にもなるので petitions の最後の –sを名詞の複数形の –sと勘違いせずに動詞の三単現の -sときちんと認識できるかが理解のカギです。すると後は、動詞petition(請願する、懇願する)の語法で読んでいけばいいのです。

 

文章の骨格を抜き出すと、

 

The said Michelangelo petitions His Holiness to negotiate with the Illustrious Lord Duke of Urbino for his complete release from the said Tomb.

 

S petitions O to do ~ for … 「S Oのために~するよう懇願する」

 

となり、上記の文章は、「かかるミケランジェロは親愛なる教皇に件の墓廟の仕事から彼を完全に解放するために高名なウルビーノ公と交渉して頂きたく懇願する次第です。」といった意味になるのです。

 

挿入の種類としては、unless~ since~ は接続詞に導かれた従属節、which~ は関係代名詞の継続用法、それ以外はすべて分詞です。

 

ちなみに、大学入試を控えた高校生などが長文で苦手とするのが、まず代名詞の処理の仕方。例えば、they, them, it などが何を指しているかしっかり特定せずに「彼ら」「それ」と訳して読み進めてしまい、なんとなく意味が分かった気になっているが実は良くわからないというもの。そしてもう一つが、この挿入です。何らかの句や節がひとつ挿入されただけで、英文の構造がどこかにすっとんでしまう受験生が多いので、上記のような文が仮に入試にでたら脅威以外のなにものでもないでしょう。

 

最後に、挿入部分を全て訳すと(なかなか難しい作業ですが)、以下のような意味合いになります。

 

「かかるミケランジェロは、年老いてもなお、全能なる教皇へお仕えしたいと望んでおりますが、一方で教皇よりかかる事業に取り掛かるよう命じられつつも、身体的にも精神的にも束縛されているユリウス二世のこの仕事から完全に解放されない限り教皇にお仕えすることができず、親愛なる教皇に件の墓廟の仕事から彼を完全に解放するように高名なウルビーノ公と交渉して彼と公の間にあるあらゆ責務を無効にして頂きたく懇願するのは、教皇のために仕事をしようと決心しているからであります。」

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