英語学習のヒント

連鎖関係詞のwho/whom

2014年1月31日

関係詞は英語が苦手な人が躓きやすいポイントのひとつです。

 

そんな関係詞の中でも特に複雑なのが連鎖関係詞と呼ばれるものですが、先日、社会人の生徒さんと授業で読んでいる文献中に以下のような文章がでてきました。

 

They selected individuals whom they believed would accept this role willingly.
(訳)「彼らはこの役割を率先して受け入れてくれると信じている人達を選んだのだ。」

 

この文中の関係代名詞は文の真ん中あたりにあるwhomですが、これは文法的に厳密に考えるとwhoが正しいのです。分かりやすいように関係代名詞が対応する「主語‐動詞‐目的語」の関係を赤色で示します。

 

They selected individuals whom they believed would accept this role willingly.

 

連鎖関係詞というのは、関係詞がその直後にあるS-Vを飛び越えて次にくる節の構成要素の一部になっているものです。つまり、上記の文ではwhom would accept this role willinglyとなり先行詞がindividualsとなるのですが、whom would accept…は文法的におかしいですよね。

 

関係詞が苦手な人のためにさらに詳しく説明します。
仮に上記の文を二文に分割するならば、

 

They selected individuals.
They believed (that) they would accept this role willingly.

 

となります(便宜上、接続詞のthatは括弧にくくっています)。第1文のindividualsは第2文の従属節内では代名詞のtheyで言い換えられています。これらの文を、関係詞を使って1文にしようとすれば、主格のtheywhoに変わって、individualsの次にくるわけです。
They selected individuals who…
They believed (that) _____ would accept this role willingly.

 

あとは、whoのあとに第2文の残りの要素を繋げれば文が完成します。
すると、

 

They selected individuals who they believed would accept this role willingly.

 

となるのが正しい形なのです。

それでは、この文章の書き手がミスをしたのでしょうか。そして出版前の校正の段階で編集者もミスを見過ごしたのでしょうか?どうもそうではないようなのです。

 

この本はadvance directiveという生前に自分が死んだ後にどうして欲しいかを文書として残しておく「事前指示書」について書かれたもので、著者もその道で博士号を取得している専門家です。まずは、非常に教養の高い英語のネイティブが書いた文章だということは押さえておきたいところです。

 

それではなぜ主格でなく目的格がここで使われているかというと、文法の解説には非常に詳しいジーニアス英和大辞典には次のような例文と解説が掲載されています。

 

The man (whom) they had thought would be the next governor was killed.
次期知事になるだろうと思われていた人が殺された《◆whom を用いることがあるのは他動詞thoughtにひかれるため;ここは主格なので通例はwhothat
(引用終わり)

 

つまり、they had thought、最初の文で言えば、they believedで使われている、thinkbelieveが他動詞でありその目的語がないことによって、関係代名詞の目的格が来ているというのです。いずれにしても、これは文法的には正確ではないわけですが、上記のような教養あるネイティブですら自身の著書で普通に使っているということは無視できない例だと思います。

 

それでも、この文章を単なる校正におけるミスと考える人もいるかもしれません。つまり著者はwhoと書いたつもりがwhomになってしまった、校正の段階でもそれに気付かなかったと。しかし、私がそうとは考えない理由は何かというと、この文章の少し上の部分に以下のような文があるからです。

 

Some participants chose individuals they thought would have an understanding of the purpose of advance directives and have some knowledge of death and dying, such as a nurse or a lawyer.
(訳)参加者の中には、事前指示書の目的を理解し死や臨終についていくらかの知識をもっていると彼らが考えられる人物、例えば看護師や弁護士などを選んだ者もいた。

 

この文でも連鎖関係詞が使われています。正確に言えば、連鎖関係詞は省略されているのですが、冒頭のSome participants chose individualsthey thought would have…の間には連鎖関係詞があったはずなのです。

 

この文章の場合も、they thoughtを飛び越して次に来るwould have an understanding of…と対応する関係代名詞は主格です。つまり文法的にはwhoまたはthatが来るべきなのです。

 

そしてここで関係代名詞が省略されているということが、私がこの著者が意図して連鎖関係代名詞で目的格を使っていると考えている根拠です。中学、高校で学んだ関係代名詞の省略を思い出してください。目的格の関係代名詞は非常によく省略されましたが、主格は基本的には省略されなかったはずです。つまり著者はここで関係代名詞を目的格と意識していたから省略したと考えるのが自然でしょう。これを校正ミスと考えるのは非常に難しいと思います。

 

以上、最近授業で取り上げた本の中での連鎖関係詞について書いてきましたが、Eigojuku英語塾ではこうした複雑な文章も極力分かりやすく解説していくことを心がけています。

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